小学校では2020年より新しい学習指導要領に基づき学習時間や授業内容等が進められています。
学習指導要領が変わるという話の中で「アクティブ・ラーニング」という言葉を聞いたことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
新しい学習指導要領では、主体的に学び、学んだことを生かす力を育むことが重要視されていて、そのための学び方の1つが「アクティブ・ラーニング」です。
ここでは、アクティブら・ラーニングについて紹介します。
アクティブ・ラーニングとは?
10年ほど前までは、与えられた条件や状況を基に課題を解決するシンプルだった社会。
しかし、近年のインターネットやIT技術の発展に伴い、自ら課題を見出し、解決しなければならない状況に社会が変化をしています。
このような社会的な背景があり、学習指導要領は「自ら課題を見つけ、自ら学び、考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい」という主旨で改訂されました。
「アクティブ・ラーニング」は、その流れの中で導入された「学び方」を示した言葉です。
新しい技術がもたらす変化の激しい社会では、複数の要素から課題を見出し、複数の仲間とともに、複数の角度から考察し、互いの考えを伝え合い、認め合い、状況に応じて優先事項を判断して課題を解決していかねばならなくなりました。
そんな社会で活躍するであろう子供たちが、主体的に学び、仲間たちとの対話をもってその学びを深めていける学び方(授業)、それが「アクティブ・ラーニング」なのです。
アクティブラーニングは大学教育の中で生まれた手法
2020年3月に改訂、公示された新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」と日本語で表現された「アクティブ・ラーニング」は、元々は大学教育の改革の中で出てきた考え方や手法でした。
この「アクティブ・ラーニング」は小学校という場で展開される「アクティブ・ラーニング」とはやや異なります。
「アクティブ・ラーニング」が比較的いろいろな意味で用いられている言葉であり、実践する教員や受け手の側に誤解や混乱を生じさるべきではない、といった背景があり、学習指導要領の改訂の作業の中で文部科学省の判断により、より理解しやすい日本語【主体的・対話的で深い学び】という表現となったようです。
クラスという組織がさほど重要ではない大学の講義の様子を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
大教室で100名規模の生徒を前に、教授が一方的にその学問を解説し、生徒はメモを取って受動的に学ぶだけであった教育を変えていくための「アクティブ・ラーニング」と小学校の学びを区別するべきである、という見方は納得できるところです。
かつて「ゆとり教育」という言葉が、本来の意図とは異なる部分で一人歩きしてしまったことも踏まえての「よりわかりやすく」という意図での修正ではないかという見方もあり、名称や表現同様にわかりやすい教育の実践にも期待が集まるところです。
アクティブ・ラーニングの取り入れられた授業
主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点を取り入れた授業は、特定の教科だけに限ったものではなく、各教科の各授業の中に取り入れられるものになります。「アクティブ・ラーニング」が取り入れられた授業がどのようなものなのかをご紹介しましょう。
アクティブ・ラーニング~主体的な学びの事例1
「アクティブ・ラーニング」では、自分の学んだことを振り返り、次の学びや生活に生かすことを重視しています。
例えば体育では、学習・実施する競技の「学習カード」が存在し、「どうするとさらに上達するのか」を、「今日よくできたところ」「うまくできなかったところ」「そこから見つけた改善点」の視点で振り返り、次に生かしていきます。
自ら考え、カードを記入することで、主体的に学ぶことを養っていくのです。
アクティブ・ラーニング~対話的な学びの事例
対話的な学び、と聞くと「話し合う」ことを思い浮かべる方も多いと思いますが、その通りです。
例えば、理科の実験では、グループワークとして、それぞれが実験の結果を予測し共有し、実際に実験を行い、実験の結果を分析した視点を共有し、話し合うことで、ともに考え、ともに学び、新しい視点や広い視野での発想を引き出していく授業が行われます。
対話を通して、認め合い高め合う力を育てていくのです。「こうなるはず」という見立てや結果から考えられることなど、対話の中で、複数の視点や複数の観点が存在すること、それらを参考に考えを深めることを体感していくのです。
アクティブ・ラーニング~深い学びの事例
ひとつひとつの知識がつながり、「わかった」「おもしろい」と思える授業も行われます。
例えば社会なら、ひとつの歴史的事実について、「なぜそうなったのか」「ほかの可能性はなかったのか」などを歴史的資料や地図(地理)、地域の特性などからの知識をつなげて複合的に考え、お互いに意見を出し合い、話し合い結果を導き出し、さらにその結果が当時の世の中にどのような影響を与えたのかを考え話し合う、という授業です。
根拠となる資料や事実といった知識を複数つなげて、考えや答えに深みを持たせていくのです。
アクティブ・ラーニングで「これまでの授業」はどうなる?
「アクティブ・ラーニング」が導入されたからといって、これまでのように先生が教えてくれる授業がおろそかになる訳ではありません。
自分の考えを適切に伝える表現力、相手の考えを認める人間性、複数の意見から考えをまとめる、深める思考力、テーマの結論として複数の意見から一つの方向性を導き出す判断力は、これまで行われてきた「知識と技能の習得」というインプットがあってはじめてアウトプットされるものなのです。
双方の授業をバランスよく実施することで、子供たちの力を伸ばしていく、それが小学校での「アクティブ・ラーニング」です。
まとめ
今回は、「アクティブ・ラーニング」についてご紹介しました。ご紹介した授業は「学び合い」とも呼ばれ話し合うことを基本としています。
ご家庭でもお子様との「対話」を大切にしていくことが、よりよい学びの鍵となることでしょう。