科学技術やIT・AI技術の発展に伴って、時代や社会は飛躍的に変化を遂げています。
変化の激しい時代にあって、子供たちはどのような学びが必要なのでしょうか。見ていきましょう。
STEAM教育とは何か
みなさんはSTEAM教育という言葉を聞いたことがありますか。
STEAM(読み方は「スティーム」)とは、
- Science(科学)
- Technology(技術)
- Engineering(ものづくり)
- Art(芸術や教養)
- Mathematics(数学)
上記の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語です。数学や科学で学んだことをテクノロジーやエンジニアリング(ものづくり)に活かしていき、社会に役立つ価値を還元していくことを最終目標とした教育であり、近年では、日本でも「教育学会」や「教育協会」が立ち上がるなど、注目を集めているのです。
なぜSTEAM教育が注目されているのか
STEAM教育は(読み方は「ステム」教育=Science、Technology、Engineering、Mathematics)として1990年代にアメリカでスタートしたものです。
ITやAIの技術革新が進み、発展し続ける国際社会での競争力の創出、速度の速い技術革新がもたらす世界的なIT技術者不足への対策、という観点から、世界各国で注目度や重要性が高まってきたと考えられています。
また、当時のオバマ大統領(アメリカ)が重要な国家戦略としてSTEM教育に触れたメッセージを発信したことで、その注目度がさらに高まったのではないかとも言われています。
ITやAI技術の発展により、単なる機械的な課題抽出・解決ではなく、人間として社会で生活を送る生活者の視点から課題を見出し解決していける人材を育成する教育として、人が作り上げる人文的価値やデザイン性という意味でのArt(芸術や教養)の概念が加わりました。
科学や技術を組み合わせて新しい価値を生み出し、実際の生活や仕事の中で起こる社会の課題や問題を想像的で創造的なものに変えていく世界を変えていく学びである、とすら捉えられるSTEAM教育には注目だけでなく、期待も高まってきているのです。
日本でのSTEAM教育の位置づけは?
文部科学省は、科学技術の変化の激しい時代を生き抜く力として、下記の3つの力が重要であると考えています。
- 「文章や情報を正確に読み解き、対話する力」
- 「科学的に思考、吟味し活用する力」
- 「価値を見つけ出す感性と力、好奇心・探求力」
この三つの力を身につけるための「術」としてSTEAM教育を位置づけ、高等学校から本格的に学ばせる方針を持っています。
文系と理系に分かれることで科学技術に触れる人材が分離されてしまうことへの懸念もあり、高等学校時代からの導入とし、文系理系両方の生徒に学ばせるのではないか、と見られています。
小学校や中学校では「生きる力」として、たくさんの知識を組み合わせて活用する思考力や、バランスよく組み合わせたり優先したりする判断力、自分の考えをしっかりと伝える表現力、相手の考えを認め尊重する人間性を身につけ、その上で、高等学校でグローバル社会やIT・AI時代に適応し、世界に通じる人材育成を育成するために、STEAM教育を通して、自分で学び・理解し、解決する力をさらに深める、といったところでしょうか。
小学校でのSTEAM教育
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(ものづくり)、Art(芸術)、Mathematics(数学)というった高度な学習であるため小学生のうちに本格的なSTEAM教育が行われるというわけではありません。
しかし、STEAM教育の”はじめの一歩”として、「理数教育」で観察や実験などから科学的に答えを導く力を育て、データの分析から課題を発見し解決の糸口をつかむ統計的な力を育て、国語を軸とした言語教育で、論理的な考え方や豊かな感性、コミュニケーション能力、表現する力を育み素地を作っていきます。
また、STEAM教育の一環として、プログラミング教育を実施しています。課題をとらえやすく分解し解決の手順を考えるプログラミング的思考を学び課題を解決する力を高め、パソコンやタブレットなどのツールを用いて、実際にプログラムを作る学習も行っていきます。
世界に目を向けると、アメリカでは、STEAM教育の一環として、学校の授業にプログラミングや研究用のロボットの授業が導入された例もあるようです。
また、シンガポールやインド、イスラエルといった国々では国家主導で幼少期から盛んにSTEAM教育を導入しています。なかでも、IT大国として名高いインドは、小学生(およそ9歳)からMS-DOSを使ったコンピュータ教育をはじめ、徐々にWindowsへと学習を進めていくそうです。
プログラミングが得意な子供は12歳からC言語やJava言語を学びはじめ、コンピュータに関する学習を大学まで続けていく例もあるそうです。このようにSTEAM教育は、世界各国で幼少期から盛んに展開されています。
まとめ
今回は、国内外問わず注目の集まるSTEAM教育についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
小学校で行われるSTEAM教育は、プログラマーを育成するような教育ではなく、プログラミングに必要な論理的な考え方を学び、課題の抽出や解決力を高める教育です。
STEAM教育は、AIがさらに進化する将来に、その科学技術のもたらす社会に単に組み込まれるのではなく、新しい科学技術を使いこなし、さらに新しい技術や価値を生み出していく人材を育むための教育であることを、私たちも保護者として、改めて意識したいところです。